一般社団法人サステナビリティ情報審査協会

代表理事 松尾 幸喜

 

 思い起こせば1990年代は、新しい世紀の到来を目前にして、環境保全の意識が顕著に社会に浸透した時期でした。

 

 1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された地球サミット(国連環境と開発に関する国際会議)においては、気候変動枠組条約や環境と開発に関するリオ宣言など、現在の国際社会にも極めて大きな影響を及ぼすことになる国際合意がここで形成されました。1996年には国際標準化機構(ISO)により、企業を含むあらゆる組織のための環境マネジメントシステムの規格(ISO14001)が発行されました。これを機に、企業等が自ら、そしてそのサプライチェーン上の関係者に対して、環境保全の管理にシステムとして取り組むことを求める機運が広がったといえます。環境保全の状況を公表する媒体として環境報告書を発行する企業等が増えてきたのもこの時期でした。

 

 21世紀の幕開けである2001年1月には環境庁が環境省に改組され、その3年後に環境配慮促進法が制定されました。  

 

 環境配慮促進法においては、省庁ならびに独立行政法人・国立大学法人などの特定事業者に対して環境情報の公表が義務付けられ、地方自治体や大企業には環境情報の公表の努力が義務付けられました。同時に、特定事業者が環境情報を公表するにあたっては、環境報告書を作成し、他の者が行う環境報告書審査を受けるなどによって環境報告書の信頼性を高める努力も義務付けられています。  

 

 さらに、環境報告書の審査を行う者に関しては、独立した立場において環境報告書の審査に努めるとともに、環境報告書の審査の公正かつ的確な実施を確保するために必要な体制の整備及び環境報告書の審査に従事する者の資質の向上を図るように努めることが、同法において定められています。

 

 

 こんにち、ESG情報に対する審査を受けようとする企業は著しく増えています。大企業のみならず中堅企業においても、ESG情報に対する審査を受けることに関心を示す企業はますます増えてきています。  

 

 「ESG情報の外部保証ガイドブック」は、ESG情報の審査に関心をおもちの企業やその他の組織の方々を対象に、ESG情報の審査の実際をできるだけ容易に理解いただけることをめざして編まれました。日本環境情報審査協会設立当時からサステナビリティ情報審査協会となった現在に至るまで、当協会会員機関として認められた審査機関において、審査人としての豊富な経験を有する理事・監事たちが、その経験をもとにESG情報の審査の実際を紹介しています。  

 

 ESG情報の審査に係るこのような解説書はわが国ではおそらく初めて発行されるものであろうと勝手に推察していますが、初めてというめずらしさだけではなく、実用上においても読者諸氏のお役に立つものであるにちがいないと自負しています。  

 

 

 企業経営層の方々、経営企画部門の方々、IR部門の方々、サステナビリティ部門の方々、人事部門の方々、経理部門の方々など、ESGの取組みには社内のさまざまな部門の広汎かつ横断的な協働が求められます。社内の立場の違いを超えて、広くESG情報審査の参考書として本書を利用いただけることを願ってやみません。